<ペリカンとある認知症高齢者との出会いのお話>

民生委員からの相談で「奥さんが病気で入院中、食事もろくに食べずお酒ばかり飲んでいるおじいさんが居るんだけど…、
相談に乗ってくれない?」との事でした。
その方(以降Kさんと言う)の家に訪問すると玄関先まで出てきてくれましたが…フラフラで立って話が出来る状態では無かったんです。
玄関先にしゃがみこんで話をされるのですが意味不明な事ばかり返答。時々まとも(笑)「認知症状が出てるの!」と民生委員からの情報。
また、民生委員が病院へ同行し脳の画像検査を受けさせてくれたのですが…。結果:前頭葉が真っ黒になっているとのDrの診断でした。
…という事は認知症診断が付いたという事です。アルコール中毒が原因疾患らしいです。

玄関から家の中を覗くと、荒れ放題(不適切ですが…ゴミ屋敷)の状態。尿臭が酷く階段の両方の壁に便汚染。Kさん自身も土足で、
家の中を這いずり廻って…。
まともに食事をしないでワンカップのお酒で飢えをしのいでいた様子です。二階の部屋は脱ぎ捨てた服が山のように積り、
その真ん中が祠の様に空洞になっていてKさんの寝床になっていました。その周りを歩くと小さな虫が(;´Д`)ぶ~ん!と飛ぶんです。
それを見た瞬間、「もう…これはダメ、ダメ!出来ない!」と心の中で叫びました。
しかし「隣近所は悪臭で迷惑しているし家の中は物だらけタバコも吸っている。火事になったら困る」と近所のおば様達が家から出てきて訴えます。
どうしたものか?
この家を人が住めるように掃除をして、Kさんには食事を3食しっかり摂れ、安心して暮らしてもらわないと!!でも、認知症の方が一人暮らし?!
どうしよう…何とかしないと!

ペリカンのケアマネ魂に火が付きました。そこからは行政、保健所、民生委員、近隣住人、精神科病院、デイサービス、訪問介護等の、
皆さんと一緒に泣き笑いの始まり、はじまり~。

まずはKさんに「自己決定」で家の中のゴミを処分しても良いか確認。Kさんに了解を得てヘルパーの知り合いのごみ処理業者に依頼。
シルバー人材センターにいる様な優しそうなおじさんが見積もりに来てくれてお安くしてくれました。

掃除はヘルパー事業所自費扱いでお掃除に来てもらうのですが…Kさんの懐具合もケアマネとして情報収集しないし、どれくらいの暮らしが
無理なく出来るか確認のため、行政立ち合いでKさんに財布や通帳の類を確認しようとしましたが…。「どこにあるかわからない」との返答。

あの家の中をどうやって探せばよいのか?思案していると…「私、探してきま~す」と簡単にあの酷い尿臭と、ごみと、虫のいる家へ、
デイサービスの職員が一人で入って行くではありませんか!(~_~;)・・・。待つこと5~10分「見つけました~(笑)」と通帳を片手に、
家から出てきたのです。\(◎o◎)/!唖然!
「なんで?」「来たことがあるの?」「まさかね~」とみんな口々に驚きポカ~ン!でした。

その職員は何となく探したら見つかりましたとの返答。そんな馬鹿な~って思いましたが助かったのは事実です。
本当にありがたかったです。そんなこんなできれいに掃除が出来て住める家になりました。家の大掃除の間、Kさんは身を寄せるとこらが無く、
病院入院していたが退院。無事帰宅。

退院したその日からデイサービスへ通い、土曜、日曜はヘルパー利用で掃除と食事の用意をお願いしました。
デイサービスでは看護師が毎朝、前日のお弁当の残りのご飯を握って冷凍にして朝ごはんとしてレンジでチン!温めてくれます。
昼食はデイサービスのお弁当。夕食はデイサービスのスタッフや看護師が「ほかほか弁当」購入、チューハイの小缶を持たせてくれます。呑んでええの?( ゚Д゚)

その頃には同時進行で成年後見人申し立て申請を裁判所ペリカンと地域包括支援センター職員が、Kさんに同行し家庭裁判所の参与官とも情報共有し
Kさんが自宅で生活し妻の帰宅を待てるようにみんなで協力していました。

さらにデイサービスのスタッフや看護師が栄養のある食事を朝、昼、夕と提供し入浴はもちろんですが衣類の洗濯までしてくれました。
ありがとう(*^^)v感謝!感謝!

1~2ヶ月が過ぎた頃、会話が少しずつ出来るようになり、デイサービスのスタッフが掃除をしていると「手伝どうたるわ」とモップで拭き掃除をしてくれ、
荷物を持ってると「重たいやろ、貸してみ~持ったるから」と優しい言葉がけをしてくれるようになりました。
元々、温厚な性格の方のようでした。デイサービスへペリカンがKさんに会いに行くと自然と傍で新聞を広げて読まれていました。うれしい驚き~!
看護師からの情報では、自動販売機でジュースが買えるようになって、次に近隣のスーパーマーケットに自ら行き缶ジュースを購入できるようになり、
次にスーパーマーケットで自ら物を選んで購入し財布から計算してお金が出せるようになってきましたとの報告。
なんと素晴らしい\(^o^)/\(^o^)/ありがたい事です。
本当にありがたい事です。デイサービスでの規則正しい生活、栄養バランスも考えられた食事摂取が出来て、夕食には少し晩酌も許されて…。

しかし、ここまで改善するには専門職の皆さんの協力があったからこそです。
それまでは夜ひとりで「お好み焼き屋」へ行ってビール飲んで、お好み焼きを持ち帰ると言って10枚注文し無銭飲食で警察に通報されたり…、
朝、デイサービスのスタッフが迎えに行くと家に居なくて留守で探し回り慌てて警察に届け出るとそちらで一晩お世話になっていたなど(笑)
「びっくり!」繰り返しでした。ペリカン泣かせの利用者ですが憎めない人です。(^_^)
デイサービスが楽しかったのか土曜日でも一人で歩いてデイサービスまで来てました。
スタッフからの情報では職場だと思われて出勤していたみたいです。真面目な人だった見たいですね~。

その後、奥様は病院で亡くなられましたが最後のお別れも出来て、Kさんは一人暮らしで問題なく暮らせています。
この様な多職種連携が出来て在宅で認知症があっても一人で暮らす事が出来るというお話でした。めでたしめでたし(笑)

後日談ですが…、
栄養をバランス良く摂取する事が出来ると認知症状も改善できる事が解った。「学会で発表したいケース」ですと専門家の先生たちに
お褒めの言葉を頂きました。

皆さんありがとう!Kさんを元気にしてくれて!ペリカンはうれしいよ~\(^o^)/

PS:ペリカンはペリカン目ペリカン科ペリカン属でございます。
8種類(コシグロペリカン、ハイイロペリカン、シロペリカン、カッショクペリカン、
モモイロペリカン、ホシバシペリカン、コシベニペリカン、ペルーペリカン)長寿で自然界では、10~25年。飼育下では50年以上生きたらしい。
古くはマクシミリアン皇帝が飼育していたペリカンは80年以上生きたとされています。(@_@)ふ~ん。

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